SEC、気候関連情報開示の画期的な規則草案を発表
-米国証券取引委員会は、上場企業による気候に関する情報開示を義務付ける規則改正案を発表しました
- の新しい気候関連開示規則では、すべての企業にスコープ1(温室効果ガス直接排出)とスコープ2(温室効果ガス間接排出)の排出量を報告することが義務付けられることになります。スコープ3の排出量開示は、投資家が「重要」と考える場合、または企業が排出量削減等の特定の気候関連目標を設定している場合に要求され、小規模の企業は免除されます。
- この規則案は、発行者がスコープ1及びスコープ2の気候関連リスクをより効率的かつ効果的に開示することを支援することを目的としており、投資家と発行者の双方に利益をもたらすとされています。
- 新しい開示義務の対象となる可能性のある企業は、今回の規則改正案よく理解する必要があります。
セクシャル・ハラスメントの申し立て、仲裁解決の強制を禁止
- 連邦仲裁法(Federal Arbitration Act)が改正され、セクシャルハラスメントや性的暴行の申し立てに関する争いにおいて、紛争前に合意された仲裁条項は今後無効となります。この法律は、ハラスメント・性的暴行を受けたと主張する者に、紛争が発生した後、仲裁であれ法廷であれ、どの法的手段を取るかを決定する自由を与えるものです。
- 従業員が裁判所にセクハラ・性的暴行の申し立てを行った場合、その請求が以前から存在する仲裁合意の対象であるかどうかは、仲裁人ではなく、裁判所が判断します。
- この連邦法は、個人の原告による訴訟のみならず、クラスアクションやその他の手段を用いた共同訴訟により提起されたセクハラ・性的暴行の請求にも適用されます。
ニューヨーク州ファッション法、ESGがオートクチュールであることの証
-サステナビリティとこれに対するビジネスの責任を明らかにする動きが促進される中、この傾向を推し進めることになるこの新法案は、アパレル業界大手の事業運営へのアプローチを変えることとなるでしょう
- 新たに提案された New York Fashion Sustainability and Social Accountability Actはアパレル業界において、環境に関する責任の所在を明らかにするという概念を導入します。
- この法律は、近年のESG(環境・社会・ガバナンス)の動きの根底にある原則を引き継いでいます。
- この法律の求める自己評価と報告要件を満たすために、対象となる企業は内部調査やコンプライアンス監査と同じ法的アプローチを適用すると良いでしょう。
企業はウイグル強制労働防止法(UFLPA法)に備えるべき時
2022年はサプライチェーン倫理の年になるか?
- 2022年6月21日より強制労働の懸念に対処するため、新法は、中国の新彊ウイグル自治区からの製品の輸入を禁止するものです。この法律により同地域からの供給に関与していると判断される企業は、広範囲に対象となります。
- 対象となる製品を米国に輸入することを希望する者は、それらの製品が強制労働で製造されていないことを示す証拠を提出した上で、現在検討中のUFLPA法コンプライアンス基準をも満たす必要があります。
- 多くの企業で、これらのルール変更によって自社のサプライチェーンにもたらされるビジネスリスクや法的リスクを検討し、適切なコンプライアンスとデューデリジェンスの体制を構築するために事前に準備することが必要となるでしょう。
バイデン政権下の米国環境保護庁(EPA)によるPFAS規制の強化―PFAS戦略ロードマップの策定とPFASに関わる新たな展開
- PFAS規制の範囲を拡張し、規制化のペースを早めるためのロードマップにおいて更なる規制を約束
- PFAS規制の更なる範囲の拡張及び厳格化に向け連邦政府及び州政府が行動を開始
- バイデン政権は戦略ロードマップを公表することでPFAS規制を改革し続けています。
- ロードマップは、様々な環境法上の措置の実施を伴う、米国当局全体によるPFAS規制の取り組みを求めるものです。
- 今後3年間において広範囲の規制が予想されます。
- 特定のPFASを資源保護回復法(RCRA)上の「有害成分」に指定するという米国環境保護庁(EPA)の提案は、現在PFASの製造及び使用に関与していない企業に責任を及ぼす可能性があります。
- 大気浄化法(Clean Air Act)によるPFASの大気排出規制は、審理中の法案に鑑みると、かなり現実味を帯びてきています。
- EPAの科学諮問委員会(Science Advisory Board)が現在検討している研究によれば、EPAが現在採用しているPFOA及びPFOSに関する既存の環境濃度推奨レベルである70 pptは十分に厳しい基準ではないと判断される可能性があります。
- PFAS汚染の責任に関する連邦地方裁判所の決定は、PFASの汚染による過失責任の矛先をPFASの一時的な製造業者から二次的な製造業者、すなわちPFASを使ったあらゆる製品の製造業者へと移行させる可能性を秘めています。その一方で、PFAS行動法(PFAS Action Act)に対する連邦議会の行動が、PFASに対するEPAの規制のスケジュールを早める可能性があります。
制裁による混乱に備えて
-ロシアがウクライナに侵攻した場合に予想される展開
米国、欧州連合(「EU」)、英国、およびその他の同盟諸国は、ロシアがウクライナへの武装侵略を進めた場合における前代未聞の制裁措置を準備中です。外交によって最悪のシナリオを回避する時間がまだあるにしろ、企業、投資家、金融機関は、自らにとってのリスクを評価し、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を準備したり、影響を受けうる契約書の条文の見直しなどを行っています。
早期にESGデューデリジェンスを行い、リスク最小化とメリット最大化を図る
企業はもはや、環境、社会、コーポレートガバナンスのデューデリジェンスを無視することはできません。これに伴うリスク、報酬、影響があまりにも大きいからです。
SEC規則が未確定な段階でのESG関連リスクを回避するために -市場参加者は、ESGルール制定の方向性について、SEC委員の意見の相違や今後の強制執行に関連するリスクを見据えて対応する必要があります。
- 米国証券取引委員会(SEC)の直近の気候変動と取締役会のダイバーシティに関するルール制定プロセスは、今後、環境・社会・ガバナンス(ESG)基準に関連するSECの開示要件が、大幅な改革の時期を迎える可能性を示唆します。
- SECの委員等からの情報の錯綜は、市場参加者に更なる不確実性をもたらすでしょう。
- 債権の発行体及びプライベート・ファンドのマネージャーは、ESG問題に関するSECの執行(enforcement)及び民事訴訟への波紋に備えるために、ルール制定プロセスへの参加を通じてSECのアジェンダの形成に貢献するなど、一定の対策を講じることができます。
取締役会が考慮するべきESG事項のチェックリスト
- 投資家は、投資先企業が示す環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する基準に関心を寄せており、米国証券取引委員会(SEC)はESGに関する情報開示を上場企業の優先事項としています。
- 取締役会は、自社の戦略が妥当で持続可能であることを確保するために、適切なESGに関する能力を持つ多様なメンバーから構成されることが必要です。
- 取締役会は、持続可能なプロジェクトに資金投資し、ESG資本にアクセスするために、グリーンボンドの発行を検討すべきです。
- 取締役会は、経営陣のESGへのイニシアチブの進捗状況を測定し、対応策や情報開示を改善できるように、ESGプロキシーやその他のランキング(ISS、ステート・ストリートなど)を把握すべきです。SECもESG課題に関する透明性の向上を求めています。
CEAAとGREEN ACTは、エネルギー税額控除のための競合するフレームワークを提示
- GREEN ACTやその他の近時の法案と比較すると、Clean Energy for America Act (CEAA)は、エネルギー税額控除により根本的な変化をもたらします
- 米国においては、今年に入り、①風力、太陽光やその他の技術に対する現行の税制優遇措置を更に延長、強化するとともに、クリーンエネルギーの開発支援を目的とした新たな条項を導入したGREEN Act、と②クリーン電力、クリーン輸送、エネルギー効率の向上を促進するために、排出量に応じた税制優遇措置を設ける法案、Clean Energy for America Actが、相次いで議会に提出されています。
- 本稿では、両法案の共通点と相違点を説明し分析することで、今後どのような税制優遇措置が制定されるかを検討する機会を提供しています。
ミネルヴァ判決:明確なルールがまた不明瞭に
- 米国連邦最高裁のMinerva Surgical Inc. v. Hologic Inc.判決を経て、譲渡人禁反言(Assignor estoppel)の法理は、今なお存続しています。しかし、最高裁の判示は、注意深く検討する必要があり、特許の無効を主張する当事者にとってチャンスになり得る内容です
- 現在及び将来の特許請求の範囲が譲渡人禁反言の法理によってカバーされているかどうかを確認するため、特許権譲渡契約及び雇用契約を見直すべきです。特許権者、及び特許ポートフォリオの管理者は、同法理が適用されるか、及び、適用されない場合には治癒が可能であるかについて、検討する必要があります。
- 広い権利範囲を有する請求項を含めて最初の特許出願を行うことで、譲渡人禁反言の法理の適用を強化することができます。
- 本判決は、譲渡人禁反言の法理の適用を回避する狭いルートを認めるものであり、その射程は、今後の下級審判例により、明確化されていくと思われます。
Snow Phipps事件: 新型コロナウイルスに関するMAEの存在及び通常の事業運営を行う誓約事項の違反を否定
-デラウェア州衡平法裁判所、買主が、重大な悪影響の存在及び対象企業による通常の事業運営を行う誓約事項の違反を立証できず、コミットメントレターに基づく買収資金の借入れのための合理的な最善の努力を怠ったと判断、売主による買収契約の特定履行の請求を認める。
- 新型コロナウイルスの影響により対象企業の売上高が5週連続で前年比40%以上と急激に減少した後、週次の売上高が増加傾向にあり、買収契約の解除前にさらなる回復を示すボトムアップ予測が行われたことは、重大な悪影響を及ぼす、又は及ぼすことが合理的に予想される事象には該当しないと判断されました。MAE(Material Adverse Effect; 重大な悪影響)の存在を立証するためには、対象企業のビジネスに継続的に重大な変化をもたらす必要があり、その立証のハードルは依然高いといえます。
- 対象企業によるリボルビング・クレジット・ファシリティ契約に基づく多額の借入金の引出し及びコスト削減策は、対象企業が過去に行った借入金の引出し及び売上高の減少に伴うコスト削減の過去の慣行と矛盾せず、対象企業の通常の事業運営から大きく逸脱したものではないと判断されました。
- 買主が使用した財務モデルが、対象企業からの意見を求めず、対象企業による実際の販売データに基づく再予測を組み込んでいなかったこと、及び、買主がコミットメントレターの変更を追加で要求したことは、買主が借入れによる資金調達を行うために合理的な最善の努力を行うという義務に違反したと判断されました。
米国におけるディスカバリを利用した発信者情報開示手続の概要
- インターネット上で、会社の名誉・評判を毀損するような虚偽の投稿がなされ、そのサーバーが米国にある場合、米国のディスカバリ手続を利用して、投稿者の氏名・住所などの情報を入手することが認められています。
- 日本の発信者情報開示手続(2021年改正含みます)と比較し、米国のディスカバリ手続は、一般に、より緩やかな条件で、より多くの情報を、より実効性のある方法で、より迅速に収集できる場合が多いと考えられます。
「身近な化学物質」―フタル酸エステル類(プラスチックの可塑剤の一種、フタレート、Phthalates)がPFASのように扱われる可能性
-広範囲にわたるフタル酸エステル類への曝露(exposure)に関する社会的・規制的な懸念の高まりにより、事業が受ける規制上や訴訟上のリスクが急速に高まる可能性があります。
- フタル酸エステル類は、一般消費財や工業製品に幅広く含まれている化学物質で、その健康被害に対する社会的な関心が急速に高まっています。
- PFASの例に見られるように、化学物質への曝露に対する社会の関心が高まると、これまでとは異なる規制基準が広く採用されることになり、予期せぬ訴訟リスクが生じる可能性があります。
- 一部のフタル酸エステル類は、すでに連邦の環境法による規制の対象となっており、最近では、フタル酸エステル類の使用や廃棄を制限する措置をとっている州もあります。
バイデン政権によるPFAS規制の取り組みに伴う、PFASに関する情報請求 (Information Requests)や召喚令状 (Subpoenas)の増加
- 連邦政府や州政府は、PFAS物質に関連する企業の業務について、取締りの根拠となるような情報を収集するために、情報請求や召喚令状を使います。
- 政府の情報請求や召喚令状の発行は公的な情報であるため、そのような書状を受け取った者は、特にその回答がこれらの強力な化学物質との関連を示す場合には、PFASに関連する高い訴訟リスクに直面することになります。
- 企業は、将来起こりうる責任を軽減するために、企業のコンプライアンスプログラムや環境管理システムを導入すべきでしょう。
中国 包括的な反外国制裁法を可決
- 反外国制裁法を可決したことにより、中国は、米国、EUなどの外国からの制裁に対抗するための最も広範な法的手段を構築しました。
- 新法の下では、中国(香港及びマカオを含む)の全ての組織及び個人は、外国による対中制裁の実施の援助・ほう助をしていると認められれば、ブラックリストに掲載されるリスクがあります。これには、多国籍企業の子会社及び外国市民を含みます。米国及び中国の両国で事業を行う多国籍企業は、米国の経済制裁に従うか、又は、中国のブラックリストに掲載されるかのジレンマに直面します。
- さらに今回の立法により、中国国民及び組織は、外国による対中制裁を実施し、又は、実施を支援しているあらゆる組織・個人を相手方として人民法院に訴訟を提訴することができます。
王の身代金保険:ランサムウェアのリスクマネジメントにおけるサイバー保険の役割
- 今日の企業は、常にハッカーによる身代金要求目当てのランサムウェア攻撃を受けるリスクに晒されています。
- ダークサイドによるサイバー攻撃を受け、身代金を支払ったコロニアル・パイプライン社も、サイバー保険に加入していたと報じられています。
- サイバー保険については賛否両論がありますが、サイバー攻撃によるリスクを管理、軽減する上で、重要な役割を果たしていくでしょう。
バイデン大統領、広範囲にわたる新たなサイバーセキュリティ改革を発表
- 2021年5月12日、バイデン大統領は、国家サイバーセキュリティの向上に関する大統領令を発表し、連邦政府のサイバーセキュリティの最新化を目的とする広範囲な改革を提案しました。今回の発表は、最近頻発しているサイバー攻撃やランサムウェアに関し、連邦政府のみならず、政府調達契約に基づいて連邦政府に納入する業者のサイバーセキュリティを強化することを目的としています。
- この大統領令には、ゼロトラスト・アーキテクチャ、エンドポイントでの検知及び対応、データの暗号化並びに多要素認証の更なる普及推進が含まれています。
- この大統領令は、重要なソフトウェアに対する新たなサイバーセキュリティ要件の策定を指示するとともに、必要なアップデートがなされない場合には、レガシーソフトウェアを削除することも義務付けています。
欧州からのデータ移転につき、新SCCの最終版が発表
-欧州委員会が2021年6月4日に行った決定により、EEAからの個人データ移転のための新SCCが確定しました。
- 欧州司法裁判所が、EU及び米国間のプライバシーシールドを無効化した後、多くの企業が、データ移転にあたって、標準契約条項(SCC)に依拠するようになりました。今回の決定により、現行のSCCはすべて無効となり、新SCCに置き換えられることになります。
- 新SCCは、モジュール方式を採用し、GDPR28条3項及び4項に基づく処理者の権利及び義務を規定しています。これにより、SCCを利用中の企業は、契約の再締結作業が必要になります。
- 企業は、あと3か月間、現行のSCCを使用することができますが、18か月後には、国際的なデータ移転の際には、新SCCのみが適用されることになります。
UKRIが英国政府のネットゼロ目標の達成に挑戦するプロジェクトに1億7,100万ポンドを投資
-重工業やエネルギー産業のプロジェクトが、二酸化炭素排出量を削減する目的で、政府資金の受領者となります。
- 英国のマージ―サイド、サウスウェールズ、ティーズサイド、ハンバーサイド及びアバディーンシャーの主要な産業地域は、脱炭素化産業のための資金を受け取ることになります。
- 水素及びCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)技術は、脱炭素化計画の中心です。
- 英国政府からの資金に対して、企業は相当あるいはそれ以上の投資をして、合計4億3,100万ポンドが英国のネットゼロ排出量目標の達成に向けて費やされます。