米国の中国に焦点を当てた対外投資規制:日本企業が知っておくべきこと
- バイデン大統領が2023年8月9日に「懸念の国の特定の材料技術および製品への米国の投資に対処する大統領令」を発令し、これにより、対外投資の規制と届け出の実施規則が導入される見込みです。
- 新しい対外投資規制が全面的に実施されると、中国、香港、マカオにおける特定のセクター/技術への投資が禁止されたり、これらの投資に関する通知義務が生じるでしょう。
- 日本企業は米国の規則が適用される状況や、規制がプロジェクトや中国の関連会社にどのような影響を及ぼす可能性があるか、また、中国での米国企業との合弁事業機会、米国投資家との提携、中国での顧客やサプライヤーへの影響を理解する必要があります。
AAM(次世代空モビリティ):離陸の許可は目前?
-次世代空モビリティ (Advanced Air Mobility)は、航空産業にとって刺激的な新しいフロンティアであり、持続可能な未来への道を示しています。
- 次世代空モビリティ(Advanced Air Mobility:AAM)は、新たな技術による動力を得た人や貨物の次世代の空輸を表す総称です。
- 多くのAAMは、運用時に二酸化炭素排出ゼロとなるように設計されています。
- 日本、欧州連合、英国、米国などの国々では、AAMの利用を考慮に入れて、規制環境が急速に変化しています 。
企業透明化法:実質的支配者情報報告チェックリスト
- 企業透明化法は、広範囲にわたる法人に対し、法人を所有、支配、設立した者を特定する報告書を、米国財務省金融犯罪捜査網(FinCEN)に提出するよう義務づけています。
- 同法は、FinCENに、当該情報を限定された目的において政府当局および一部の金融機関に開示する権限を付与しています。
- 当該要件は、新設法人については2024年1月1日に発効し、既存法人については2025年1月1日に発効します。ただし、2024年に存在する法人は、2025年の該当報告期日に先立ち解散した場合でも、報告の必要があると思われます。
押し寄せる制裁執行の波:BAT和解に見る米司法省の新方針
-6億ドルを超える制裁から得られる重要な教訓とグローバル企業の制裁リスク対応
- 2023年4月、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社は、制裁違反に関して米国当局と総額6億ドルを超える和解を締結しました。
- 多国籍の事業やサプライチェーンを持つ企業にとって、リスク評価と効果的な制裁コンプライアンスプログラムの構築は極めて重要であり、これは米国外の企業にも当てはまります。
- リスクアセスメントやコンプライアンスプログラムの構築は、法的な秘匿特権の保護の下で行うことが理想的です。
人権デューデリジェンス - M&A取引におけるESGのインパクト
- M&A取引において、環境・社会・ガバナンス(ESG)への配慮が世界的に重要性を増し続ける中、多くの買い手はデューデリジェンスのプロセスにおいて人権の検討を含むことを求めています。
- ESGの課題をめぐる国際的な法的枠組みが変化し続ける中、M&A取引において人権に関するデューデリジェンスの実施も発展し続けています。
- 企業や買収を検討している者は、人権や人道的な労働条件の尊重が不十分な国でビジネスを行うリスクに対して、ますます敏感になっています。
- M&A取引のデューデリジェンスをしている段階で人権リスクを特定し、対処することで、買い手はリスクを軽減し、自らを風評被害から守ることができます。
バイデン政権、サイバーセキュリティ戦略において大幅な方向転換を提案
-「脆弱でリスクの高い」ソフトウェア開発者には責任を課す方向へ
- 本戦略は、ソフトウェア開発者の負う法的責任について、サイバーセキュリティ市場の根本的な変更もたらす提案をしています。
- 提案されている法律は、ソフトウェア開発者が独自の責任を限定する手段を制限し、他方で、新たなセーフハーバープログラムを通じて、ソフトウェア開発者に一定の基準を満たすインセンティブを与えることを目的としています。
- 連邦調達規則におけるソフトウェアセキュリティの責任強化の推進など、議会の承認を要さないものからこの提案の則った対応を始める可能性があるので、企業はこれに備える必要があります。
米NLRB、退職合意書における一般的な秘密保持条項・誹謗中傷行為禁止条項を無効に
-NLRBはこのほど、非管理職の従業員との退職合意書において、広範な秘密保持条項および誹謗中傷行為禁止条項を含むことを違法と判断しました。この決定は、労働組合のある無しにかかわらず影響を及ぼすと思われます。
- NLRB (National Labor Relations Board:全米労働関係委員会)は、退職合意書に含まれる過度に広範な秘密保持条項および誹謗中傷行為禁止条項は、従業員のNLRA (National Labor Relations Act: 全米労働関係法) 第7条の権利に対する違法な制限であると判断しました。
- 従業員の権利を「萎縮する」とみなされる条項を含む退職合意書を単に「提示」することだけでも、その行為自体が独立して違法な労働慣行と認定するに十分な根拠であるとみなしました。
- 雇用主は、今回のNLRBの決定を受け、退職合意書を慎重に見直し、これが新たなルールに準拠し、かつ最大限の強制力を確保するために、労働雇用弁護士に相談するべきでしょう。
カリフォルニア州、ノースカロライナ州、ウィスコンシン州、イリノイ州がPFAS汚染で企業を提訴
- 2022年半ば以降、ノースカロライナ州、カリフォルニア州、ウィスコンシン州、イリノイ州は、PFAS及びPFAS含有製品の一次・二次製造業者を、その製造や販売によって環境被害が発生したと主張し、提訴しました。
- 各州は、過去、現在、将来にわたって広く使用される、PFAS化合物(その一部は州が健康に悪影響を及ぼすと主張している)の除去費用の損害賠償を求めています。
- これらの訴訟は、製造・販売業者に課された、州によるPFAS含有製品の禁止・報告義務とともに、PFAS規制への取り組み強化を示唆しています。
ニューヨーク州、商業金融取引に関する開示要件の最終規則を決定
- ニューヨーク州は、カリフォルニア州などに加わり、商業金融取引の広範なカテゴリーについて消費者向けと同様の情報開示を義務付けることになりました。
- 2023年2月1日、ニューヨーク州金融サービス局は、商業用融資取引において消費者向けと同様の情報開示を義務付ける最終規則を公布しました。
- ニューヨークの規制は、カリフォルニア州が発表した同様の規制に続くものであり、これらの諸規制は総合的に商業用金融市場の大部分を網羅することになります。
- 昨年、ユタ州とバージニア州が同様の要件を制定しており、他の州も追随する可能性が高いと思われます。
SECによる執行活動:2022年を振り返って
-2022年の記録的な執行活動に続き、2023年もゲンスラー委員長の優先事項が積極的に追求されることが予想されます。
- SECは、ESG関連事項、デジタル資産市場における不正行為、サイバーセキュリティ、インサイダー取引、その他の規制および執行の優先事項に対処するために、そのかなりのリソースを引き続き投入すると予想されます。
- SECの執行部門 (Enforcement Division) は、証券業界の「ゲートキーパー」の立場にいる者や監督責任者を含む個人の告発に重点を置く意向を示しています。
- 市場参加者は、コンプライアンス・プログラムを見直し、徹底したリスク評価を実施し、潜在的な欠陥に対処するために方針、手順、統制の予防的な改定を行うべきです。
2023年1月1日より、米国各州において「意図的に添加された」PFAS含有製品の使用禁止及び届出義務を課す法律が施行
- 米国の複数の州において、PFAS含有製品の商業的流通の禁止または届出義務を課す法律が制定され、カリフォルニア、ニューヨーク、メインの3州では2023年1月1日よりそれぞれの規制法が施行されました。
- 各州法の遵守のため、対象企業は上流サプライヤーからの情報収集が必要になりますが、秘密保持やサプライチェーンにおける情報の喪失・誤伝達などを理由に困難となる可能性があります。
- これらの州法は氷山の一角であり、今後、各州が追随すると考えられます。
米国などでの、暗号資産規制に向けての動きはいかに?
-暗号資産分野において不安定な状況が続く中、効率的な発展のためには明確な規制が必要であることが浮き彫りにされていながら、どのように規制すべきかについては、現在も議論が続いています。
- 最近の仮想通貨分野における不安定な状況は、暗号資産が米国証券取引委員会(SEC)や米国商品先物取引委員会(CFTC)の管轄下にある証券に該当するかどうかをめぐる米国内の議論をさらに激化させることになるでしょう。
- SECを含む主要なプレーヤーは、すべての暗号資産が証券であるわけではないとの見解をもっており、米国が国際競争力のある暗号資産のエコシステムを発展させるためには、連邦政府からさらなる指針が必要であると主張しています。
- 他の国では、暗号資産が広範囲な特性を持ち得ることを考慮して、様々なトークン分類を許容するという暗号資産規制へのアプローチを既にとっていたり、そのようなアプローチの構築に取り組む姿勢を示しています。
雇用主は要注意、米FTCは競業避止契約を禁止する規則案を発表
- この規則案は、既存および将来のすべての従業員との競業避止契約を禁止するものです。
- FTC (Federal Trade Commission: 連邦取引委員会) は、雇用主のために業務を遂行する非従業員を含む労働者との競業避止契約を全米で禁止する規則案を発表しました。
- 本規則案には、事業の25%以上の持分を所有するオーナーが当該事業を売却する場合のみに例外が認められるという規定が含まれていますが、FTCは最終規則にさらなる例外規定を設けるべきかどうかについてパブリック・コメントを募集中です。
- 最終規則には更なる変更が加えられると共に、そもそもFTCに本規則を定める権限があるか否かについても訴訟で争われることが予想されます。
米国の一部の州および都市で給与の透明性が義務付けられる
- マイノリティ・グループに属する労働者の賃金格差に代表される差別問題を是正するために、米国の各地で給与の透明性を確保するための立法が進んでいます。企業による給与の開示や、その職種で支払われるであろうという給与水準を、求人情報に含むことにより、マイノリティに不利になっている構造的な賃金格差をなくしていこうという動きです。これはESG推進の追い風を受けて今後も強まっていくことが予想されます。
- 本年11月から既に施行されているニューヨーク市と2023年から始まるカリフォルニア州の法律を例として、雇用者がどのような対応をしなければならないかを解説します。各法律による規制は異なるので全米各地に拠点を有する日本企業は、今後の立法の動きもモニターする必要があります。
ロシア制裁への対応: サプライチェーンリスク低減のための企業戦略
ロシアのウクライナ侵攻と、この攻撃を支援するベラルーシの役割に対応して、米国と同盟国はロシアとベラルーシの両国に対し、大規模な制裁と輸出規制を課しています。今後の状況の進展によっては、更なる規制の可能性もあります。
このような規制の結果、クロスボーダーのビジネスに関わる業界では、ビジネス活動を通じて、間接的に意図せずして制裁措置や輸出規制に違反するリスクが高まっています。 特に、中国などロシアとの貿易を公然と続けている国が関与するサプライチェーンでは、そのようなリスクが存在します。本稿では、サプライチェーンリスクの概要と、当該リスクを軽減するために企業が取り得る措置について説明します。
連邦裁判所、フロリダ州 Stop WOKE Act の施行を阻止
-フロリダ州公民権法の修正は、言論の自由等を保護する連邦憲法修正第1条を「根底から覆す」ものであると認定
- 連邦裁判所は、議論を呼んだStop WOKE Actに対し、連邦憲法修正第1条を根拠に、暫定差止命令を認めました。
- 同法は発効後短期間施行され、フロリダ州に従業員、会員、資格保有者を持つ雇用者、協会、資格認定団体に広く適用されました。
- この法律は、フロリダ州公民権法を改正し、義務付けられた研修プログラムで特定のDEIコンセプトを推奨することは、違法な人種・性差別と定義づけていますが、同法に対して差止訴訟が提起されていました。
米国環境保護庁(EPA)によるPFASに関する新たな健康推奨基準の公表
-4種のPFASに関する規制を厳格化
- PFASのうち、PFOA、PFOS、PFBS、GenXの4種類について、EPAは新たな健康推奨基準を公表しました。この基準は実質的な浄化レベルを示すものであり、バイデン政権下のEPAにおける継続的なPFAS規制強化を示すものと言えます。
- 特にPFOA及びPFOSに関する新たな基準は、ほとんどの検査手段において検出困難な程度に厳しい基準であり、かつ既存の除去技術によって達成することも難しい基準となっています。
- 規制当局およびステークホルダーが新基準に対応することにより、現在進行中または計画されているPFASの除去作業(米国国防総省における作業含む)に短期的な影響が出る恐れがあります。
米国鋼製薄板建材の製造・販売会社CEMCO社の買収においてJFE商事株式会社を代理
米国の大手鋼製薄板建材の製造・販売会社である California Expanded Metal Products Co. (CEMCO社) は、当事務所のクライアントであるJFE商事株式会社及びそのグループ会社であるJFE Shoji America Holdings Inc.による買収において、最終契約を締結しました。本取引は、JFEの鉄鋼サプライチェーンを拡大するとともに、日本、米国、中国、ASEANを拠点とする事業者間の連携を深めることで、既存の事業体制を強化するものです。
カリフォルニア州が、中小企業等向け商業融資を対象とした新しい情報開示法の施行日を決定
-カリフォルニア州が、商業融資に関して貸主等に中小企業等の借主向けの情報開示を義務付ける法律(法律SB-1235、以下「商業融資情報開示法」といいます。)を完成させ、2022年12月9日に同法律が施行されることが決まりました。
- 2022年6月9日、カリフォルニア州金融保護及びイノべーション局(California Department of Financial Protection and Innovation)は、商業融資情報開示法を完成させたため、2022年12月9日に同法律及びその施行規則が施行されることが決まりました。
- ニューヨーク州はカリフォルニア州の商業融資情報開示法と同様の要件を有する法律を制定しており、2022年1月1日に施行する予定でしたが、施行を延期することを発表しており、施行日は未定です。
- 今年に入ってユタ州とバージニア州もカリフォルニア州の商業融資情報開示法と同種の法律を制定しており、他の州も同種法律を制定する可能性が高まっています。
2022年国家重要能力防衛法案による「逆CFIUS」プロセス提案の概要
- 2022年6月12日、上院・下院の超党派議員団は、中国を含む指定された「懸念国 (country of concern)」投資などの取引について、拡大した対外審査メカニズムを確立する「2022年国家重要能力防衛法」(National Critical Capabilities Defense Act of 2022 (NCCDA))の新草案に合意したと発表しました。
- 適用範囲が極めて広く法案の詳細が不明瞭ため、アメリカのビジネスはNCCDA新草案に反対の姿勢を示しています。