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ニューズレター
ディープシーク挑戦への対応
- トランプ大統領のスターゲート計画とAIで先導するための企業の準備
- 大統領令は規制を合理化し、バイデン時代の制約的な政策を撤廃し、AIイノベーションを優先します。
- スターゲート計画は、AIインフラの強化と世界的なリーダーシップ及び国家安全保障の維持を目的とした5,000億ドル規模の米国の取組みであり、AI、再生可能エネルギー、インフラ分野の企業にとって絶好の機会をもたらします。
- AIの革新および持続可能性に関するスターゲートの目標を達成できる企業は、この変革期の競争において優位に立つことができるでしょう。
トランプ政権の大統領令が政府および民間セクターにおけるDEIを標的
-大統領令により自主的なDEIイニシアティブのあり方も不確実に
- トランプ大統領は、連邦政府全体におけるDEI関連のオフィスおよびDEIイニシアティブを終了する大統領令に署名しました。これにより、どのようなDEIプログラムが許容されるのかについて不確実な状況となっています。
- この大統領令は、連邦政府および民間セクターにおける「違法な」DEIイニシアティブを撤廃することを、「違法な優遇措置と差別の撤廃」と位置付けており、公民権法の執行と整合すると主張しています。
トランプ2.0:アメリカ第一主義の通商政策の形成
- トランプ政権は、過去の制裁措置を撤回しつつ新たな制裁を導入し、特にキューバのテロ支援国家への再指定や国際刑事裁判所への制裁を復活させました。これにより、米国の外交および安全保障政策における対立的な姿勢が強調されています。
- トランプ大統領は、大統領令を通じて、関税の拡大適用、輸出管理の強化、対外投資規制、米中経済関係の見直し、貿易協定の再評価を指示しました。これらの政策は、国内産業保護と国家安全保障の強化を目指し、米国の経済的優位性を維持することを目的としています。
- 制裁措置の急速な変化と新たな規制導入により、企業は複雑化する法規制への対応が求められます。特に、異なる国・地域間での制裁措置の不一致(例:EUや英国)を考慮したグローバルな対応が重要です。
改訂された反トラスト部門の会社コンプライアンス指針において考慮すべき重要なポイント
- 改訂された反トラスト・コンプライアンス指針は、その適用範囲を拡大し、司法省(DOJ)がコンプライアンスプログラムをどのように評価するかについて重要な知見を提供しています。この指針は、刑事上の独占禁止法違反に対処するための仕組みとしてだけでなく、民事上の独占禁止法に基づく調査や訴訟にも関連する枠組みを提供するものです。
- また、改訂版指針は、変化する規制環境を踏まえ、DOJの優先課題を反映した重点分野を明確に示しています。
- 改訂版指針に基づいた堅実な反トラスト・コンプライアンスプログラムを実施することで、独占禁止法に関わるリスクを軽減し、潜在的な違反の早期発見や、調査が行われた際の影響を最小限に抑える効果が期待できます。
新議会の発足、より厳しい精査?議会による監視と調査への備えについて
-共和党が上下両院とホワイトハウスを掌握するに伴い、今月発足した第119回議会は、監視活動の波を巻き起こすことが確実です。企業等は高リスクかつ予測不可能な監視環境に備え、準備が必要です。
- 議会とホワイトハウスを掌握し、共和党は監視権限を用いて広範な政策アジェンダを推進するでしょう。
- 議会による監視権限 (Congressional oversight) は、連邦支出の無駄や政府資源の不適切な使用の特定、中国との関係を持つ会社に対する精査、技術分野の慣行、金融サービスの監督、環境・社会・ガバナンス(ESG)および多様性、公平性、包括性(DEI)に関する政策など、注目を集める課題に焦点を当てる可能性があります。
- 米議会の監視権限の対象となり得る企業や団体は、脆弱性を評価し、コンプライアンスを強化するとともに、議会との効果的な関係与を築くのみならず、特定の調査要請に対応するための戦略的計画を策定する必要があります。この計画には、文書や証言の提出要求への対応が含まれる場合があります。
トランプ2.0:ホワイトハウスと議会共和党は議会審査法により規制緩和か
-議会とホワイトハウスの両方を掌握する共和党は、バイデン政権の最後の数ヶ月に公布された規則を速やかに廃止するためにCRAを活用する用意があります
- 議会審査法(CRA)は、規則を廃止するための迅速な立法手続きを提供します。
- CRAは、「真夜中の規則」と呼ばれる、前政権末期に出された規則への対応に特に効果的です。
「エネルギー転換」から「エネルギー安全保障」へ:共和党の連邦議会上下両院と行政府の掌握がエネルギー業界に与える影響を評価
-新政権の発足に伴い、米国内エネルギー生産と規制改革に重点が置かれる中、米国のエネルギー及び気候政策における優先事項が大きく変化することが予想されます。
- 新たに発足するトランプ政権は、米国内のエネルギー生産(重要鉱物を含む)を優先事項とし、米国が中国との競争に必要な技術を支援する方針を示しています。
- バイデン政権時代の主要政策であるインフレ削減法(Inflation Reduction Act)は、部分的に縮小される可能性や、エネルギー分野全般への予算の再配分が行われる可能性があるものの、赤色州(共和党支持州)や紫色州(接戦州)にもたらす恩恵を考慮し、完全な撤廃はされない見込みです。
- トランプ政権は再びパリ協定からの離脱を決定し、ひいては国連気候変動枠組条約(UNFCCC)からの離脱を検討する可能性もあります。これにより、米国の気候変動に対するコミットメントが縮小され、中国に対する脱炭素化の圧力も軽減されることが予想されます。
法務責任者(ゼネラルカウンセル)のための新HSR規則に関する手引き
-2025年2月10日より、Hart-Scott-Rodino合併の事前届出規則に基づくコンプライアンスは、取引当事者に著しく多くの業務を課すことになります。
- より複雑な届出に対する早期の計画:Hart-Scott-Rodino法の事前届出が必要な取引を計画している企業は、特に、実際の競合企業又は潜在的な競合企業、同じ垂直的流通チェーンにある企業、又は複雑な企業構造を持つ企業(例えばプライベート・エクイティ・ファームなど)が関与する取引の場合、弁護士に相談して、新しい届出書の準備を早期に開始する必要があります。
- 文書管理のベストプラクティス: 企業は、独占禁止法を専門とする弁護士に相談の上、CEOと共有する定期的に作成される報告書、取締役会に提供される文書、及び取引関連文書の起草及び収集に関するベストプラクティスを確立すべきです。
- 政府の追跡調査への対応: 米連邦取引委員会及び司法省が新規則に従って提出された提出書類の審査に慣れるにつれ、企業及び法律事務所は、申請内容の明確化や補足を求める問い合わせを受けることを予期すべきです。新規則に関する政府の解釈の変化に適応できないと判断され、申請が「差し戻し」されるリスクを回避するため、このような問い合わせに対しては慎重に対応すべきです。
企業透明化法:仮差止命令が停止
-第5巡回区控訴裁判所は、テキサス州連邦地方裁判所が2024年12月3日にTexas Top Cop Shop, Inc訴訟で出した仮差止命令を停止しました。 この判決により、企業に対する企業透明化法(CTA)に基づく報告義務が再び有効になりました。ただし、この判決が発表された直後、FinCENは、本来2025年1月1日までに報告を行う必要がある2024年1月1日時点で存在していた殆どの企業に対し、報告期限を2025年1月13日まで延長すると発表しました。
- テキサス州連邦地裁により2024年12月3日に出されたCTA報告規則の施行を禁止する全国規模の仮差止命令は、控訴裁判所によって解除されました。
- 仮差止命令(2024年1月1日時点で存在していた企業に対する2025年1月1日の遵守期限の実施を含む)は、もはや効力を失っています。
- 2024年内に仮差止命令の控訴に関する追加の手続きは予定されていません。
- 控訴裁判所の決定によりCTA上の報告義務が復活しましたが、FinCENは別途、本来2025年1月1日までに報告を行う必要があるほとんどの企業に対し、期限を2025年1月13日まで延長すると発表しました。
2025年1月2日に米国の対外投資新ルールが施行
- 対外投資に関する最終規則は、国家安全保障上のリスクとみなされる可能性のある中国への投資を、通知プロセスを通じて監視し、必要に応じて制限するための新しい制度を正式に定めたものです。
- この規制は、半導体、人工知能、量子コンピューティング分野における投資、グリーンフィールド・プロジェクト、ベンチャーキャピタル、その他の取り決めに幅広く適用されます。
- エグゼクティブまたはディレクターの役割を担う米国人個人は、取引から適切に忌避されない限り、特定の活動を故意に指示することが禁じられています。
企業透明化法 仮差止命令
-米国連邦地方裁判所は、企業透明化法 (CTA) の施行を禁じ、2025年1月1日の遵守期限を延期する全国的な仮差止命令を発令
- テキサス州の連邦地裁は、政府によるCTA と報告規則の施行を差止めました。
- 全米に適用される差止命令は、報告規則の2025年1月1日の遵守期限を延期するものです。
- 裁判所は「CTAは議会の権限外として違憲の可能性が高い」としました。
カリフォルニア州の雇用主は職場の暴力防止計画が必要
-カリフォルニア州のすべての雇用主は、職場の暴力の危険性を適時に特定し是正し、効果的な研修を全従業員に提供し、職場の暴力の報告に対応し記録しなければならない。
- すべての雇用主、従業員、就業場所、雇用主が提供する住居は、職場の暴力を労働安全に関連付ける新しいカリフォルニア州労働法の要件に従わなければなりません。
- カリフォルニア州労働安全衛生局(Cal/OSHA)は現在、職場暴力防止基準を作成しており、カリフォルニア州労働安全衛生基準委員会(OSHSB)への提出期限である2026年12月31日が迫っています。
戦略の転換: EUと米国の制裁管轄権について
- 制裁の域外適用の範囲は、歴史的に米国とEUの間で異なっており、米国の方がより積極的でした。 最近では、EUのルールは米国寄りにシフトしています。
- EUのロシアとベラルーシに対する制裁の域外適用範囲は大幅に拡大し、EU企業(受動的なEUの親会社を含む)を組織構造に持つ日本企業にも影響を与える可能性があります。しかし、EUは、現地の法律が遵守を妨げている状況について企業が説明することを認める「最善の努力」規則を適用しています。
- 世界中で事業を展開する企業は、EUでの事業が適用される新しい基準を満たすよう、社内のコンプライアンス方針を再検討する必要があります。
連邦取引委員会:競業避止ルールを当面禁止する連邦地裁判決
-今後さらなる訴訟が予想され、競業避止契約に関する多くの州法上の制約を考慮すると、雇用主は、引き続き慎重に、競業避止契約を従業員に提示することが求められます
- 2024年8月20日、テキサス州北部地区連邦地方裁判所は、Ryan, LLC対.FTC事件において略式判決を下し、2024年9月4日に施行予定であった連邦取引委員会(FTC)の競業避止条項規則を無効としました。
- 同裁判所は、FTCには不正競争を規制する実質的な規則を制定する権限はなく、加えて、同規則は恣意的かつ濫用的なものであると結論づけました。
- 今回の判断により、FTCによる同規則の施行が禁止されることになりました。
デラウェア州衡平法裁判所の判決を受けて、デラウェア州会社法(DGCL)の重要な改正が採択
-デラウェア州議会はDGCLの改正を採択し、合併契約や企業・株主間の契約の確実性を担保
- デラウェア州会社法(DGCL)は、今般の改正により、定款に明示的に規定されているか否かにかかわらず、企業が株主との間で、特定のガバナンスに関する権利について、有効かつ強制力のある契約を締結することができる権限を持つことを成文化しました。
- 取締役会は、存続会社の定款やディスクロージャースケジュールを含まない取引契約(合併または統合契約)を、「ほぼ最終的な形式」で有効に承認することができることを明確にしました。
- 合併契約における株主プレミアムやリバース・ターミネーション・フィーの賠償を予定する損害賠償条項は有効であり、執行可能であることを明確にしました。
企業透明化法(Corporate Transparency Act):2025年1月1日に迫る提出期限に向けて、準備はお済みですか?
- 実質的所有権情報(Beneficial Ownership Information)に関する報告書は、金融犯罪取締ネットワーク(Financial Crimes Enforcement Network、以下FinCEN)を通じて電子的に提出する必要があります。
- 実質的所有者又は会社設立申請者として報告が必要な個人は、FinCEN ID番号を申請する必要があります。
- 企業透明化法に故意に違反した場合、1日あたり500ドルの罰金や、場合によっては懲役刑が科される可能性があります。
アメリカ昨今の法の執行状況に対する企業の備え
- 米国連邦当局は近年、サイバーセキュリティ、AI、金融犯罪、汚職、通商制裁の分野で、ヘルスケア、テクノロジー、金融業界を標的とした企業取締りを強化しており、企業のサイバー関連ツール、AI、暗号資産の使用を特に注視しています。
- 企業が米連邦捜査のリスクを軽減する最も効果的な方法のひとつは、会社の規模、業務内容、洗練度に見合った有意義で効果的なコンプライアンス・プログラムを導入することです。
- 米国で事業を展開する日本企業や、米国の規制対象となる会社は、調査が始まる前に対応のプランを立てるべきです。 最も重要なことは、経営陣が適切な方針を示すことです。
「シェブロン法理」の終焉
―連邦政府の規則制定権限に対する司法優位性の復活
- 1984年、連邦最高裁は、特定の許可要件から規制を緩和するという米国環境保護庁 (EPA)の大気浄化法に基づく規則を無効とした下級審判決を破棄し、シェブロンU.S.A.対天然資源保護協議会(NRDC)事件に判決を下しました。
- 連邦最高裁は、Loper Bright事件とRelentless事件において、1984年の判決で確立したシェブロン法理を覆すべきか明確化すべきかを争うため、上訴を許可しました。
- 2024年6月28日、連邦最高裁は、シェブロン法理が連邦司法府はすべての法律問題を決定しなければならないという憲法の定めを無視している、さらに行政手続法(APA)の主要条項のひとつにも違反していると判断し、1984年の判決には欠陥があったとして、シェブロン法理を破棄しました。
法的リフ:音楽業界はAIが不協和音だと主張-訴訟が続出
- 訴状の主張は、SunoとUdioが開発した生成AI技術が、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)、ソニー・ミュージックエンタテインメント、その他の大手レコード会社が所有する著作権を直接侵害しているというものです。
- 生成AIモデルに対する予測不可能性と潜在的リスクの増大により、AIプラットフォームがアーティスト、作家、ジャーナリスト等とライセンス契約を結ぶ動きが顕著になっています。
共同開発における知的財産の保護にはNDAに留まらない合意形成が必須
- 他の企業との共同開発に関わる場合、既存の知的財産(バックグラウンドIP )を十分に守るためには慎重なアプローチが必要です。また共同開発がどのように進むかのシナリオを考慮して、既存の知的財産のみならず、共同で開発した知的財産(フォアグラウンドIP)の保護も念頭に入れる必要があります。
- 特にスタートアップ企業が自ら開発した技術をレバレッジとして他企業とコラボレーションする場合にこの点は非常に重要になります。
- バックグラウンドIPとフォアグラウンドIPの双方を十分に守るためには、守秘義務契約では不十分です。後々のトラブルを事前に回避し、建設的かつ効率的な共同開発を進めるために、プロジェクトの冒頭で合意形成をすることが大切です。